「素晴らしい素材を使っているので、調理に手を掛け過ぎません。その味を誠実にシンプルに引き出すことこそが僕の腕の見せどころだと思っています。素材をこねくり回してつくりたい料理に合わせようとするのは傲慢じゃないかって思うんです」
20歳で始めた飲食店でのアルバイトをきっかけに、30年間、天職と断言する飲食業界を歩んできた舟木さん。ご自身曰く、若い頃から負けず嫌いでこだわりやの職人気質。「誰よりも美味しい料理をつくりたい」という意識を持ち続けながら、高級イタリアンレストランで当時の厳しい修行に負けじと腕を磨き、その後独立を見据えて大手飲食企業にて「飲食のプロ」を目指して経営ノウハウや心得を身につけ、満を持して開業。以来、食の安全と品質のよさを何より大切な軸として料理を提供してきました。
「人間の身体は食べるもので出来ている、その食べるものを提供している重みを料理人として強く感じるようになっていました。夢中で食について学び、知識を積み上げてきました。過労からアトピー疾患を患い、食生活を見直して健康を取り戻した自身の実体験も大きかったですが、お客さんにもうちの料理で身体にいいものを食べることの価値に改めて気づいてもらいたいと思っています」
化学肥料や農薬を使わない野菜、自然な環境と安全な肥料で育てられた肉、昔ながらの製法でつくられた調味料、自家製法のハムやソーセージ、自然派ワイン、オーガニックのソフトドリンクの提供、そして小麦粉、白砂糖、化学調味料、化学食品添加物不使用など、そのこだわりに終わりはありません。合わせて価格を抑えて提供していくことも大事にしています。
「このクオリティでこの価格で大丈夫ですかってよく驚かれますが、たまにしか食べられない敷居の高い店にはしたくないんです。食生活って続けることが大事ですから、本音を言えばその分毎日のようにうちに来て食べて元気になってほしいと思っています(笑)」
オープンキッチンで料理をしながら、お客さんとの会話も楽しみ、食事の様子に気を配り、塩加減を調整してみたり、サイズダウンの提案をしたり。食のエンターテイナーさながらに美味しく、楽しく、喜んでもらうことに全力投球する日々を送っています。
「昔、『料理は愛情』ってフレーズが流行りましたよね。まさに僕の思いを凝縮した言葉です。遠方からもお客さまが来てくださる店ですが、せっかくの三軒茶屋というまちにもっと密着していきたいと考えるようになりました。こんな不安ばかりの時代だからこそ、みんなが集まってみんなで元気になれるような場としての役割も担えたらなと思います」