昔ながらの賑やかな飲み屋が集積する地下街を歩くと、ひときわシックでスタイリッシュな雰囲気漂う店内空間が目に留まります。
「修行経験はなし、料理経験も浅いし、店づくりもビールの知識もすべて独学。だからこそ固定概念もないし、こうあるべき論もないのが強みだと思っているんです。プロ店主でないぶん、いつもお客さん目線で考えられているというか。自分が飲み食いしてきて感じた、こんな店があったらいいな、こんな料理を食べたい、を実現中です」
横浜市出身の櫻庭さん、都内の大学のマーケティング学科を卒業後は印刷会社の営業マンとして働いていました。社会人2年目を迎える頃、自分の力で起業をしたいと思う気持ちが芽生え始めました。自分の大好きなモノで商売をしようと起業のイメージを膨らました結果、選んだのが国産クラフトビール。4年目で脱サラを決意しました。
「実は大学時代まではあまりビールが好きではなかったんですが、サラリーマン生活で働いた後のビールの美味しさにすっかりやられ(笑)、そして広くて奥深いクラフトビールの世界にどっぷりはまり。振り返れば学生時代に商品パッケージに興味があって、卒論は4大ビールの缶の配色と購買意欲の色彩心理の研究をしていました。不思議とビールの縁に導かれていたのかな、なんて思っています」
そして、その味の相性を確信し、ビールの相棒に選んだのが、めちゃくちゃ食べ歩いて味を研究し、試行錯誤の末、レシピをつくりあげたという大好きなスパイスカレーでした。昨年友人と共同経営で下高井戸にて店を始め、無事軌道に乗せ、今夏ここ経堂で自身の店を持ちました。
クラフト生ビールは常時6種類、ご縁がつながったさまざまなブルワリーから、自分が美味しいと思ったモノ、飲んだことはないけれど気になるモノ、味のバランスを考えながらも意外性も楽しみながら自由に銘柄を選んでいます。スパイスカレーは常時2種類とその両方を楽しめる合いがけという3つのメニュー。
「クラフトビールはその作り手の話を伝えながら美味しさをお客さんと共有し、楽しむアイテムのような。一方カレーは自分がイチからつくりあげたものですから、『おいしい』と言われるとほんとに嬉しいもの。これぞという新しいレシピをつくりあげて早く新作を提供したいと思っています」
また、忙しい営業の傍ら力を入れているのがコミュニティづくり。そのきっかけにと月に2回ずつ、ランニングイベントやビールイベント、カレーイベントなどを開催。前店からのお客さん、経堂からのお客さん、ここがなければ知り合わなかったかもしれないひとのつながりを演出できることが嬉しいそう。
「経堂にありそうでなかった店かな、なんて思っています。まだまだこれからですが、僕自身が日々楽しくて。お客さんに喜ばれる店づくりをじわじわ進めていきたいと思っています」