「こうみえて私お酒が弱いんです。だから飲めなくてもカフェではなくてお酒の場にいたい人の気持ちもよくわかります。世の中、人間がいるからトラブルが起こることもあるけれど、寄り添って助けてくれるのもやっぱり人間なんだってこれまでの人生で確信したことです。お客さんにここで新たな人と出会い、つながってほしくて。その架け橋になることが私の仕事です」
細やかな気遣いと飾らぬ笑顔でたくさんの人を魅了するオーナーのよしえさん。自分らしさの原点は小学校時代。個性的な教育方針だったその学校で過ごすなか、個性、自主性、カタチのないものをカタチにする創造性が身についたかも、と振り返ります。大学時代のバイトで興味本位に飛び込んだ接客業、以来その世界で長く接客力を磨いてきました。
「大学の卒論テーマはなんと『コミュニケーションと接客術』。学内で最優秀賞をもらったんですよ(笑)。目に見えて自分への評価が数字に出るこの世界、負けず嫌いの私の性に合っていました。当時、自分の容姿に自信がなくて。ならば自分しか出来ない接客を、と思ったのが人と人をつなぐこと。たくさんのお客さまと縁がつながり、評価いただけることにやりがいを感じました」
10年前、結婚を機にご主人とここ経堂でまちの定食屋を立ち上げ、その真心込めた料理と心遣いあふれる接客力が評判を呼び、行列の出来る人気店に成長させました。
「定食屋ではお腹いっぱい食べてたくさんのひとに幸せになってもらうことが一番のやりがいです。それとは別に人が集まり語らい元気をチャージしてもらえる場をつくりたいとずっと思っていたんです。別の店で一からという気構えで開業の告知もしなかったので、私が立ち飲み屋を切り盛りしている姿に通りがかりの定食屋のお客さんたちがびっくりしていました(笑)」
高級な洋酒も常備しながらもビールとハイボールとサワーがメインのカジュアルな立ち飲み屋が目指すところ。つまみは定食屋仕込みの一から手作りの手の込んだものを用意。毎日でも通ってもらえるためのリーズナブルな価格設定とお客さんと読み合わせまでするという明朗会計もよしえさんのこだわるところです。
「なかなか頼りない私がひとり店を切り盛りして、戸締まりまですることを心配してくださるお客さんも多くて何かと気に掛けてもらっています。お客さんに見守られて日々の営業があります」
定食屋の女将と二足のわらじが続いています。店外までお客さんがあふれる日があったり、毎日来てくれる人がいたり、お客さん同士で連絡先を交換するひとがいたり、よしえさんの思う店づくりが一歩一歩進み、忙しくても疲れていてもそれ以上に毎日が楽しいそう。
「変わった屋号は『真似る』から。いろんな店、人、料理のいいところを柔軟に取り入れてどんどんいい場にしていきたい。お客さんにいっぱい愛され、そしていつか『あんな店、私もやってみたいな』、なんて女性から憧れるようになれたら嬉しいですね」