オーナーシェフのマットさんの故郷はオーストラリアの小さなまちパークス、ご両親揃って学校の先生という厳格な環境で育ちました。小さい頃からひらめいたアイデアをカタチにすることを楽しむ芸術家気質だったというご自身は料理人の道を選びます。料理学校卒業後シドニーのカフェ、日本に渡り有名な多国籍レストランのヘッドシェフを勤め、その後ニュージーランドのレストランへ。日々料理づくりに情熱を傾けるなか、現地で日本人の奥さまと出会い、結婚。10年後、お子さんに日本の教育も受けさせたい、という思いもあり日本へ移住。奥さまの地元経堂で店を持つことを決意しました。
「僕自身は料理人として生きていければいいと思っていました。店舗経営には正直まったく夢を持てなかったんですが、妻に『マットにしか出せない味を日本の皆さんに食べてもらいたい。絶対喜んでもらえるから』と強く背中を押されて。今はここでお店を持ってよかったと心から思っています。目の前のお客さんの反応をワクワク思い浮かべながら毎日料理をつくっています。また来てくれると『気に入ってくれたんだな』って」
「どこの国の料理ですか」と聞かれることも少なくないそう。あえて言うなれば、オセアニア、イタリア、イギリスなどの食文化のいいところをミックスした欧風料理とのこと。オーストラリア人が愛して止まない菓子「ラミントン」や「ソーセージロール」などの伝統料理のほか、自身が修行したフレンチの技術でソースづくりやドレッシングにとことんこだわった、ラザニア、パスタやサラダなどはどれも日本人の味覚に合うよう調整しています。
「僕自身が『しょっぱい』ものが苦手なのもあって、塩分はしっかり控えています。旬の素材を使って、ハーブの香りでの味づくりを大事にしています。頭の中はいつも次の料理の開発。料理のイメージが浮かび、そこから納得がいくまで味づくりをとことん突きつめるので、妻に心配されることもしばしば(笑)」
揃って子どもが大好きなお2人が同店開業前から手掛けていたのが英語を使っての料理教室。料理を通して、子ども達の五感を育てたい、という思いからです。レッスンは週に4日も開講しています。夕方に小学生から高校生の子どもたちが店にやってきます。料理が完成する待ち時間にはゲームをしたり、絵を描いたりのレクリエーションも。営業との両立は大変なときもあるそうですが、子どもたちの成長がやりがいになっています。
「経堂のまちも人も大好きです。年配のお客さんに『海外にはなかなか行けないけれど、ここで海外の美味しいモノを食べられるから嬉しい』なんて言っていただけることも。食べたことのない、でもとびきり美味しい、僕しか作れない料理を追求していきます」