「ここのフランチャイズ募集を見て『これだ』と思ったんです。果物が小さくカットされたり、シロップにつけたりと加工して使用されることの多い洋菓子と異なり、生の果物そのものが主役のフルーツ大福は私にはとても魅力的なコンテンツでした。果物の美味しさを知ってもらいながらフードロスに関する発信をしていきたいと考えました」
店主の薄井華香さんはご実家が石川県で代々続く青果の仲卸業、新鮮な青果品に囲まれて育ちました。一方、皮にほん少しキズがあるだけ、カタチが悪いだけで味に問題のない青果品が商品として通用しない現実、出荷先との兼ね合いで大量在庫を抱えて処分せざるを得ない仲卸業の厳しさ。幼い頃から「もったいない」を目の当たりにしてきたそうです。
「何か自分にできることはないか、いつしか真剣に考えるようになっていました」
中学卒業を機に早く行動を起こしたい、そんな薄井さんの強い思いをご両親も応援することに。開店資金を前借りし、ひとり上京してビジネスを専門的に学べる単位制高校に通学しながら自ら店も経営するという思い切った挑戦を決断しました。
系列店で大福づくりの研修を終え開業に至ります。フードロス解消への第一歩として農家からの規格外となった果物の仕入れルートも同店独自に確保しました。また、それぞれの果物の魅力をしっかりお客さんにお届けしたいと、大福ごとの可愛い手書きの商品説明も同店独自の取り組みになっています。
「高校生である私を知って『頑張ってね』と声を掛けて買ってくださる優しいお客さんがたくさんです」
店舗経営に関わるすべてを現場で実践中の薄井さん、その忙しい1日は毎朝6時の大福づくりから。水分が多く柔らかい果実を傷つけぬよう、つぶさぬよう、ひとつずつ丁寧に白餡と餅でうすく優しく包んでいきます。
「天気や気温から製造数を判断していますが読みが外れて早々に品切れになったり、うんと残ってしまったり。日々の商売の難しさを痛感しています。でもロスを出すことだけは出来ません。オリジナルで『レスキューコーナー』と称して翌日に4コまとめて格安で販売しています」
フルーツ大福に特化した専門店として、大福と相性のいい果物のなかから最高の味わいを生む品種を見極めてここにしかない逸品を作り出せるかが勝負どころ。果物の目利き力と知識の向上のため、たまの休みはメモを片手にデパートのフルーツコーナーをめぐっています。商いへの思いが高まるなか、薄井さんの次なる挑戦が始まります。
「この11月に『華果』(はなか)にリニューアルします。これまでの経験を生かして、さらに自分のしたいことを体現したいと思っています。よりご愛顧いただける店を目指して頑張ります」