「大切な家族を思う気持ちで心を込めて、身体にいい材料で美味しい料理をつくることが私の仕事です。国や料理が違っても、料理人の気持ちはきっと同じです」
ヘッドシェフを務めるシャンカーさんは南インドの古都タンジャヴールの出身。料理づくりが得意だったお母さん、お姉さんの影響で料理人の道へ。インドの三ツ星ホテルのレストランで働いていたところ、スカウトを受け来日。「シリバラジ」を皮切りに国内の南インド料理店の名店を亘り歩き、最後はこの場所にあった南インド料理店で腕を振るっていました。同店の閉店で一時日本を離れていましたが、その常連であったモハンさんがこのたびシャンカーさんをシェフに呼びよせ「タンジャイミールス」を開店することに。幡ヶ谷に続き、ここ経堂は2号店になります。
「慣れ親しんだ経堂の前店物件が空いて、同じ場所でまた厨房に立つことが出来るなんて。最終日、お客さんが別れを惜しんでたくさん駆けつけてくれて、食べ終わっても名残惜しいと閉店の瞬間まで待っていてくれたのは一生忘れられない光景です。そんな皆さんが『ずっと待っていたよ』と会いに来てくれています。経堂は第2のホームタウン。縁をつなげてくれた神様に感謝しています」
屋号にもなっているミールスとは南インド料理を象徴するワンプレート料理、同店の看板メニューです。ステンレスプレートの上にお米、カレー、スープ、漬物、炒め物というラインナップはどこか日本の定食を彷彿させます。添え物の薄く焼かれた「アッパラム」も原料は豆粉、あっさり薄いおせんべいのよう。それぞれの味を知って楽しんで、最後は混ぜて味変を楽しむのがオススメだそう。「手食」に挑戦したいお客さんにはスタッフがレクチャーしてくれます。
「南インド料理の伝統料理はどれも身体に負担のかからない健康食です。お肉も使いますが、豆や野菜が中心、スパイスやハーブ、ココナッツオイルをたくさん使って調理します。毎日食べても飽きない、いわば日本の味噌汁みたいな存在の料理が多いのかなと思います」
まだまだ知らない、聞き慣れないメニューの多い南インド料理。「何で出来ているんですか」「どうやって作るんですか」というお客さんの質問に答えるのもシャンカーさんの楽しみ。「何を食べても美味しい」と知った常連さんたちが「おまかせ」で料理を注文することも少なくないそうです。
「15年前最初に来日しましたが、落ち着いた日本の風土がすぐ気に入りました。インド人はちょっとやかましくてパワフルな人種なので(笑)、僕は日本人っぽいのかな、なんて感じることが多いです(笑)。特にゴールを決めずにやっていくのが僕流。大好きな日本で美味しいモノを食べてもらうために毎日ベストを尽くしていく、それに尽きます。毎日とても幸せです」