日常着としての着物を軽やかに着こなし、店を切り盛りするのは着物好きがご縁で働くようになった女性スタッフたち。後継ぎのいない3代目の旦那さんが店の未来を託す、着物のことならお任せあれの頼れる自称「チトセヤ・レンジャー」です。

今では普段着もほぼ着物という若き店長の高嶋さんは、祖父母の影響で小さい頃から時代劇、演歌が大好き。SMAPに夢中になる同級生を横目に自身の推しは北島三郎、和文化に心惹かれて育ちました。美大を卒業後、着物を着てデッサンモデルのアルバイトをしていた帰りに、「千歳屋」店頭の「バイト募集」の張り紙と運命の出会いを果たします。

「着物について旦那さんと2時間語り合って、採用に。『実は1ヶ月も持たないだろうと思っていたよ』とあとで打ち明けられました(笑)。あれから15年。まだまだ勉強中ですが、皆さんに育てられここまできました」

着物を知る、持つ、着る機会が少なく、高価で扱いの難しいイメージばかりが先行し敬遠されがちな現代。それでも、縁あってお祝いごとや親からの譲り受けなどのきっかけで着物と出会ってくれたひとに、その素晴らしさを精一杯伝えたいと高嶋さんは考えます。

「1枚の反物から余り布なく着物に仕立てられ、お手入れ、お直しをすれば3代、4代にも亘って着ることができますし、帯やショールやカバンにもリメイクできる。洋服のような流行もないし、年齢を重ねても体型を気にせず、楽しめます。とっても合理的で文化的な衣装で、いいものを長く大切に、という日本が誇る文化と精神が詰まっています。もともと日常着ですから、着慣れると洋服より断然楽だという方も少なくないですね。私もまさにそのひとりです。外反母趾が辛くて草履を愛用される方もいらっしゃいます」

同店の思いとこだわりが象徴されるのが「東京シルク」という名の反物。着物になるまでの全ての工程を同店が監修しています。都内唯一の養蚕農家と契約し、今では大変貴重になった純国産の繭を買い上げ、長野県で繭から糸へ、京都の丹後で糸から反物に織上げ、長年お付き合いある職人さんに染めを依頼しています。
「反物1枚には約3,000頭もの繭が必要になります。そのシーズンには桑を元気に食べるお蚕さんの姿をうちの店でも見ていただけます。お蚕さんから巧の職人さんの手を亘り、ようやく『東京シルク』となる。そのストーリーも知っていただけると嬉しいです」
一方、気軽に相談できる便利な「着物のコンビニエンスストア」として存在し続けることが、未来の着物ファンを増やす大事な種まきと考え、痒いところに手が届くサービスを充実させています。

「毎日お客さまに会える商売ではありませんが、1枚の着物の歴史そしてお客さまの人生の節目に伴奏できることがやりがいです。どんな小さな相談にも力になりますので、頼ってくださいね。いつか祖師谷のまちに着物で歩く人の姿が増えたら嬉しいです」



