「年配のお客さま方が毎日のように集って来てくださるのは想像していなかったこと。僕の体調までお見通しで無理していてもすぐバレちゃうんですよ(笑)」
小田さんは元サラリーマン。食関係の出版社、食品輸入商社と「食」関連の企業で忙しくも充実した日々を送るなか、将来を見据え、長く働き続けられ、自分とほかの誰かの居場所を作りたいと飲食店を持つことを決意。「唯一無二のメニューの提供すること」「ガラス張りの路面店」にこだわり、8年もの歳月をかけ2017年、満を持して開業しました。
カレーが好きだったことから日本では珍しい西インド料理に注目。当時その情報は非常に少なく、関連書籍を読破し、現地に亘り食べ歩いての材料の情報収集、宿泊先で調理の直接指導も受ける縁にも恵まれ、オリジナルレシピの考案に至ったそう。日本人向けにアレンジされた「ボンベイサンド®」「パオパジ」「スパイスカレー」など、その味わいはこく深くありながら想像以上に優しく、すっと身体に馴染むものばかり。年配のお客さんファンが多いのも納得です。
「現地寄りの味からスタートしたので最初はかなり辛かったかな (笑)。皆さんの声を聞きながら常にベストの味にアップグレードさせてきました」
料理をきっかけに西インドの歴史や課題を知ることとなった小田さん。厳しい労働環境に置かれる女性や子どもたちの小さな助けになりたいとヒマラヤの現地法人の女性たちが手作りした守り神「ガネーシャ」の編みぐるみやコットンバックを輸入し販売しています。
「つながったご縁への小さな恩返し。商品としての可愛いらしさに惹かれて購入いただき、皆さんがちょっぴり西インドに思いを馳せてくれたら嬉しいですね」
昨年、前職で一緒だった旧知の友人が商品開発担当として仲間入り。「ゴーダカフェ」の新たな魅力づくりに挑戦しようと日本の食材の素晴らしさを生かしたオリジナルのチャイの開発に取り組み、これまで蓄積したスパイスの知識を武器に風味豊かな「イズール」を完成させました。
「ブランド名は『日が出る国』から。みなが忙しい世の中ですが束の間、この一杯でほっとして明日への希望を持ってほしい。そんな思いを込めています」
閉店後も店の電気の一部はつけたまま帰宅。その明るさで安心を感じてもらいたい、静かな暮らしのまちの安全を守る一助になることも店を構えたからこその役割と考えています。そんな人柄が地域に愛され、店舗周りに植えられた花々は近所の方によるものだそう。店に漂う優しい雰囲気は年月をかけて小田さんを真ん中に醸成されました。
「お客さんに支えられてここまで来ました。その日常を感謝し大事にしながら、さまざまなことにトライして、ただのカフェじゃない『ゴーダカフェ』らしさをお伝えしていきたいと思っています」