
「根を詰めざるを得ない作業も少なくないですが、お返ししたときのお客さんの喜ばれる姿を楽しみにスタッフ一丸となって、アイデアを出しながら腕を競い合い取り組んでいます。どこか部活みたい雰囲気もあるかな(笑)」
暇があればずっとミシン縫いをしていたいというオーナーの清岡さんはいつも元気一杯の自称「針ネズミ」さんです。大好きなまちで、と世田谷線山下駅ほど近くのビル2階にて同店を開業したのは6年前。ひとりでスタートしましたが、月日を重ねるごとにスタッフが集まり、賑やかな作業場に。まちの人の頼れる「いつもの直し屋さん」として、昔からそこにあるかのように地域の一風景になりました。


自然豊かな瀬戸内海を臨むのどかな町で生まれ育った清岡さん。活発な性格でありながらも描くこと、手仕事が大好きな子どもだったそう。洋服のデザイン画を描いたり、マフラーを編んだり、既製のTシャツに自前のポケットを縫い付けたり。
大学進学を機に憧れの東京へ。当時は実用的でベーシックなモノではなくファッションショーに出すような先鋭的な作品を生み出すデザイナーを目指し、アパレル業界に身を置き続けてきました。お直しの部への配属を機にその技術の難しさを知り、同時にその魅力にも目覚めたそう。
「イチから作ることよりずっと手間もかかるし、難しい作業が多いことを痛感する日々。子どもが出来て産休を取り終えたタイミングで、これから一生の仕事となる自分らしい店を持ちたいと考えた時、これからはつくることより、修繕やリメイクの方が役に立てると。そこでも自分らしさをじゅうぶん表現出来ると気づきました」

「まちのお直し依頼」を柱に、以前から得意とするリサイタル用ドレスの繊細な修繕、着物のリメイク、余剰となったその専門生地からのオリジナルアウトドアグッズ製作、一点では高額になってしまう黒染めを定期で募ってまとめて手掛けるなど同店の事業は多岐に亘っています。やらない、できないと決めつけずにチャレンジを続けていくことがモットーです。

「お客さんの思いもしない依頼から学ぶことも多いんです。ここまで着たら洋服の寿命かな、と思うものにも直しの依頼があって、じゃあともう1回と手を施してみることで洋服って生き返るんですよね。モノが溢れきった時代、大事にしたいものを工夫して使い続けることってほんとにサステナブル。昨今のエコブームで終わってほしくないと思います」

地域のまつりで神輿を担いだり、商店街活動に奔走したり、店の外でも大活躍の清岡さん。自身が子ども時代のまちの思い出がたくさんあるように、今のこどもたちにもまちの思い出をつくってほしいそう。自店も元気なまちがあってこそ輝く、と考えています。
「直し職人歴20年、自分の手を心から信じられるようになりました。この仕事は機械に取って代わられないという自負はあります。洋服に関する困りごとは迷わず駆け込んでいただければと思います」


