発祥は先代が修行をしていた初台駅近くにあった「松海寿司」。同店の娘さんとの結婚を機に暖簾分けを受け、昭和38年ここ千歳烏山で開業。2代目の石澤さんは大学卒業後、神田神保町の名店「吉野寿司」で修行を積み、5年後自店へ。以来37年間暖簾を守ってきました。

「母親が教育熱心だったからか勉強もけっこう好きで進学校に通って大学に進学しましたが、ずっと長男である自分が店を継ぐことが当たり前だと思っていました。特に両親から頼まれたこともないですがそういう時代でしたよね。小学生の頃、両親が僕の誕生会に毎年友だちを招いて寿司を振る舞ってくれていたので、大人気の会でした(笑)。『美味しい』と感激している友だちたちをみて、寿司屋の息子であることがなんだか誇らしかったことを思い出します」

長年石澤さんと先代からの板前さん2人でつけ場に立っています。その熟練の握りをカウンターで楽しむのが常連さんの日常。シャリは石澤さんが気持ちしっかりめ、板前さんは気持ちふっくらめとか。長い常連さんにはその僅かな味わいの違いもわかるそう。

江戸前寿司は火を通さず、味付けもないシンプルゆえに、確かな目利きの仕入れで素材と鮮度が命。シャリは米の種類でミリ単位の水を調整して炊き上げていきます。お客さんの好みを聞くうちに増え続けた一品料理は常時40種類以上と充実。不動の人気の「ふかひれの茶碗蒸し」や季節の魚介のかき揚げ、地元の世田谷野菜を使ったカルパッチョなど。

「野菜を使う料理は多くはないですが、サラダや仕出しの出来る限り地元産のものを活用しています。地域への恩返しというと大げさですが、うちが地域に育てていただいた分、地元で頑張っておられる農家さんの小さな応援になればと思っています。もちろん新鮮さ、味も抜群です」

2人の息子さんが部活をしていたその昔、店が忙しくその手伝いに親としてなかなか行けなかったせめてものとの思いで、いつも巻き物をたくさん差し入れに持たせていたそう。社会人となって当時の子どもたちが自分のお金で、と店に足を運んでくれているそう。
「長年店をやっていると日頃の苦労が吹き飛ぶような嬉しいこともありますね」
忙しい日々の合間を縫って商店街活動に尽力する石澤さん。その人気事業のひとつ「ちとからまちバル」では運営を担いながら、当日は自店で寿司を握ります。
「時代の流れで回転寿司やスーパーのものしか食べたことがないという若者も多いんですよね。『マグロがぜんぜん違う』『初めて本物の寿司を食べた』なんて声が聞こえるとよしっと(笑)。本物の寿司の美味しさを伝えていくことが大事な役割だと思っています。うちは昭和で時が止まっているかな(笑)。自分の手で責任を持ってお届けしたいからいまだに出前も自分でバイクを走らせています。『まち寿司』の醍醐味はカウンター、是非味と雰囲気を楽しみにいらしてください」



