店長の榊原さんは佐賀県出身、友達が行くからとの動機で進学したのは農業と家庭教育に特化した専門高校の食品流通科。その実習のなかで製造したメロンパンの焼きたての美味しさに大感動し、パン職人になることを決意。就職と同時に上京し大手製パンメーカーの工場で4年間働いた後、同店に転職。大量生産の機械製造から手作業の世界に飛び込みました。

「お客さんの顔が見えるまちのパン屋さんを探し回るなか、ここの『天熟食パン』『大地の旨み食パン』のあまりの美味しさに衝撃を受けました。生地作りへの並々ならぬこだわりを知り納得。食を扱うものとして身体にいいものを作り、その美味しいパンでお客さんを笑顔にしていこう、という社長の情熱に惚れ込みました」

同店が使用する「ホシノ天然酵母」は米と麹に由来するもの。時間をゆっくりかけて発酵を促し、優しい味わいと自然な旨み、しっとりもっちりした食感がお客さんの心を掴んでいます。安定的効率的に発酵するイーストに比べ、時間はもちろん、湿度、温度などを見極める技術が求められ、榊原さんも生地作りに自信が持てるまで7年間は要したそう。

「看板商品の『天熟食パン』は8時間以上熟成させて焼き上げます。保存料、イーストフード、乳化剤不使用。卵も使っていないので卵アレルギーが気になる方にも安心です。『大地の旨み食パン』は3日間タネを寝かせて、冷蔵庫で熟成させる、仕込みから焼き上がりまで5日間もかかっています」

おしゃれな雰囲気を漂わせながらも、あくまで「まちのパン屋さん」としての存在価値を大事にする同店、見るたびに選ぶ楽しみを味わってほしいと常時100種類ものパンを提供。人気のカレーパンや多種なベーグルをはじめ、惣菜パンからデザートパンまで、さまざまな好みのパンに出会えます。できる限り焼きたてを提供するため、まとめては焼かず、小ロットに分けて一日中製造を続けています。

「これだけたくさんのお客さんが足を運んでくださっているのだから、効率が悪くとも、うちのパンづくりはきっと正解なんだと自負しています」

昨年に『もったいないパン』という同社オリジナルアプリを開発し、夕方来店したお客さんにもできる限り商品選びを楽しんでもらうため、フードロスを気にせず焼き続けることを可能としました。形が崩れたもの、余りそうなものを詰め合わせて値引き販売しています。
「いつもお母さんと来てくれる小学生に頼まれてパンづくりの現場を見せてあげたことがあるんですが後日、手作りのパンを持って『将来はパン屋になりたい』と報告に来てくれました。また、40代の女性から入院していたお母さまが退院して最初に食べたいものは『天熟食パン』と頼まれてきたと伺ったことも。お客さんに元気をもらっています。食べた人を笑顔に、を実践できているかな(笑)。『祖師谷のパンといえばサンセリテ』になりたいですね」



