「埼玉県から5年前に引っ越して来ましたが、なんて暮らしやすいまちだろうって。商店街の方が季節の催しごとをされていて、楽しく参加させてもらううちにまちが身近なものになっていました。人とつながって暮らす心地よさをこのまちに教えてもらいました」
ご主人の家業の事務仕事を担ってきたという高塚さん。子育てに余裕が生まれ、次第に自身のこれからの生き方を考えるように。
「商店街で雑貨屋さんを持ちたいと思いました。昔からこだわりの雑貨屋さんや手作りマーケットに出掛けて『いいモノ』探しをするのが大好き。世に広くは出回ってないけれど、作り手の思いあふれる『いいモノ』はたくさん。なかなか出会えない『いいモノ』とまちのひとをつなげて、暮らしを心豊かにするお手伝いができたらなって」
くしくもそんな折り、近所の小さな古本屋さんが閉店し入居者を募集。漠然としていた夢を現実とするチャンスに恵まれました。
「本が大好きな私はこの場に運命を感じてしまいました。プロバイヤーではない分、素人らしさを大事にしていこうと。『売り手』としてではなく、お客さまと同じいち『使い手』として『いいモノ』のよさを自分の言葉でお伝えできることが強みだと思っています」
スタイリッシュな店内にセンスよく商品が陳列されている同店。一点物のアクセサリー、使い心地のよいタオル、履き心地のいい靴下、上質なお皿、化学肥料不使用の茶葉など、どれも高塚さん自身が展示会などに出向き、作家やメーカーと直接交渉をして仕入れた粒よりのモノばかりです。
障害のある方の手づくり商品もそのひとつ。デザインや品質、機能性にすっかり惚れ込み仕入れた商品たち。その作り手の背景は二の次でいい、まずはお客さんにはいち商品としての素晴らしさに気づいてもらい、手に取ってもらいたいそう。
「働いて人に必要とされる喜びって誰にとっても大事なことって常々感じています。『イイもの』を作ったら正当に評価されて対価が支払われる世の中になってほしいんです。その小さな小さなお手伝いができたらと思っています」
開店半年、店づくりも商品選びも試行錯誤を繰り返しながらの日々。お客さんとの何気ない会話のなかで、まちに求められているモノを感じ取れるようになったそう。まちに必要とされる雑貨屋を目指し、一歩一歩進んでいます。
「何屋さんですか、とよく聞かれると返答に困り、『私が好きなモノを売っています』と今は返答しています(笑)。本屋さんのように特に用事がなくてもふらり来てもらえる店にしていきたいと思っています。古本も置いているので立ち読みにでも、もちろん、おしゃべりにでも是非寄ってくださいね」