若きオーナー店主の渡辺さんは秋田県出身。実家が米農家でいつも当たり前に美味しいお米、野菜がある環境で育ちました。10代の頃は東京でバンドマンとなって暮らしてみたいと田舎を出ることばかり考えていたそう。
「大学に進学するという条件で親に上京を許してもらいました(笑)。憧れのまち下北沢に住むことも出来ました。でも夢を見すぎていたのか、2年が経ったころ、想像していた感じと違う、面白くないかもって(笑)。アルバイトで始めていた飲食業が俄然楽しくなっていました」
大手飲食店系列の人気店だったその店で、独立という夢に向かってバリバリ生き生きと働く先輩たちの姿、それを応援する会社のあり方に感銘し、大学時代3年半同店で充実したバイト生活を送りました。
「僕自身お酒は強くないし、料理人を目指したい訳ではなくて。でもお客さんを笑顔にする飲みの場を提供するっていい仕事だなって。学生バイトの立場だから楽しいだけなのかも、と不安と迷いもありながら飲食の道に進むことを選びました」
卒業後、中目黒の繁盛店のビストロに就職。ホールやキッチンを経験しながら、いつかの独立を念頭に、勉強の日々。腕利きシェフによる多彩な料理の数々をカジュアルに提供する店づくりは学ぶことばかりだったそう。自身の武器にとソムリエの資格も働きながら取得しました。
「同郷の先輩が経堂に住んでいた繋がりもあって、経堂のまちに出入りするうちに、落ち着いた雰囲気がすっかり気に入り、経堂で店を持ちたいなと思うように。そして縁が縁を繋げてくれてこの物件に出会えました。ゆったりした空間づくりとオープンキッチンは外せなかったので、思い切って2店舗を借りあげてイノベーションしました」
旧知の腕利きのシェフを誘致し、今夏開業。おばんざい文化をビストロ風に表現した「洋風おばんざいの盛り合わせ」、マティーニグラスに盛り付けられた「季節食材のムースカクテル」、じっくり時間をかけて焼き上げた「塊肉の塩釜焼き」が三大名物。ほかも美しくて優しい味付けのビストロ料理の数々を提供しています。そして、あきたこまちや秋田牛、山菜などルーツの秋田食材の活用も同店の味づくりに欠かせない要素となっています。
それまでワインが苦手だったという渡辺さん自身を虜にしたナチュールワインをソムリエの目線でセレクトしているほか、生ビールはイタリアのペローニ、サワーはアールグレイ割りや実山椒割りなど。ちょっとめずらしいアルコールのラインナップも特徴的です。
「名店が多い経堂で、これまでにはなかったようなお酒の場が出来たら。僕の思う『美味しくて居心地のいい店』を追求していきます。まだまだ知られていない店なので(笑)、少し駅から離れていますが是非足を運んでみてください」