横浜市の出身、店主の川口力さんが料理人を目指したのは小学生のとき。駄菓子屋のように友だちといつも集っていた地元の小さな商店街の惣菜屋のおじちゃんとの出会いがきっかけです。
「当時は数十円だったかな、そこのコロッケやハムカツが大好きでした。あるとき調理場に手招きされて料理の様子を間近で見せてくれて。すごいな、自分も美味しい料理を作る人になろうと子ども心に決意したことを覚えています。卒業アルバムの将来の夢はコックさん、そして中学校のアルバムにも料理人と書いています」
迷うことなく高校卒業後は調理師専門学校へ、中華料理を専攻し、中国料理店に就職をしました。
「アメリカに憧れを持っていて、一時バックパッカーになってアメリカを回っていた時期もありました。でも海外で生活していると日本人であることを意識するようになって日本のために何かしたいなあ、なんて思うように。やっぱり自分が出来るのは料理で人を喜ばせること。飲食業で頑張っていこうと改めて心に決めました」
帰国後、客としてたまたま訪れた有名飲食店の「接客サービス」の素晴らしさに感動、将来の開業を見据え「接客」を学んでみようとその店でホールスタッフとして3年間働きました。続いて渋谷のダイニングカフェの店長として店づくりに奔走、その後大崎の餃子店では深くマネジメントにも関わるなど、幅広い業態の飲食店の現場経験を積み重ね、7年前に三軒茶屋でイタリアンバルを開業、続いてここ太子堂で2店目の開業に至ります。
「性格的に職人気質じゃないというか(笑)。技術や知識を得ても『どうだ、オレの料理』とはなれなかった。店を持ってみて改めて自分がやりたかったことは、美味しい料理を喜んで食べてもらえるワイワイした空間づくりだなと気づきました」
リーズナブルな価格でありながら3種類の餃子、前菜、麻婆豆腐やエビチリなどの一品料理から〆のご飯まで、赤坂「四川飯店」出身の料理長と川口さんが考案したメニューはどれもいちから手作りの文句なしの本格中華料理。青島ビールや紹興酒も提供しています。
早い時間帯に中華料理をゆっくり楽しもうと訪れるお客さん、仲間とワイワイ訪れる若い世代の常連さん、そして朝方近くに数軒目として立ち寄るお客さんや同業の飲食店主の姿も。
「お客さん同士どこかで顔見知りであったり,ここで繋がっていったり。楽しいのが一番です。地元だけではなく、遠くからのお客さんも含めて『行けばこのあいだの誰かに会える』というようなコミュニティになりたいですね。近々屋号を『CHIKARA』に変更します。店を進化させてより愛される店を目指していきます」