現代の主流はクオーツ時計、さらに多機能が搭載されたスマートウォッチなるものまでが誕生するなか、ゼンマイの力で時を刻む味わい、シンプルなデザインそして時を経て得た風合い、現行品にはない魅力を放つビンテージ時計に心奪われる人が年々増えています。濵谷さんも当時会社員として働くなか、「エルオクロック」に通い詰めたお客さんのひとりでした。ビンテージ時計に繋げられたオーナーとのご縁で同店の店長を任されました。
「昔から車や音響機器、楽器も好きでしたね。男性に多いタイプかと思うのですが機械好きのこだわり屋とでも言うのかな(笑)。なかでもビンテージ時計は手の届く範囲で購入できて、ファッションのひとつとして身に付けて楽しめるところにすっかり沼りました(笑)。20本くらいは持っていますね。半世紀以上も経った時計がしっかり動いていることに感動しながら、僕より年上じゃないか、こいつはどんな時計人生を歩んできたんだろう、なんて思いを馳せて眺めてみたり」
1960年代〜1970年代に生産された時計が同店の扱い品、一旦その役目を終えて眠っていた時計たちがオーナーによる修理手直しを経て、あらたにまた時を刻んでいます。無論すべてが1点モノ、現行の既製品の販売とは異なり、歴史、特徴、コンディションとその商品説明にはしっかり時間を掛けています。即決する方もいれば、お取り置き期間に何度も通って迷い抜いて購入される方も。
「こだわりの波長が合うお客さんばかりで接客は楽しいですね。尽きない時計談義からいろんな趣味の話まで。うちもインターネットでの販売もありますが、やはり直接見て触って、ご自身の腕につけていただくのが一番です。すっとなじむ時計に会えたときは皆さん不思議な縁を感じられるようです。出会うべくして出会ったというか」
「いつかは息子に譲るモノだから」と親子で来店し、幼い息子さんと商品を選ばれていたお客さん、「息子の嫁に唯一無二のものをプレゼントしたい」とレディースものを購入されたお客さん。たくさんの本物に触れてきた時計好きの方たちが辿り着いた小さなストーリーが、ビンテージ時計ひとつひとつの歴史を重ねていきます。その橋渡し役になれることが濵谷さんのやりがいだそうです。
「僕なりの解釈なのですが、ビンテージ時計はこの先もずっと誰かの腕を亘っていくべきものだから、自分の所有物でも時計の長い寿命の一時を共に過ごしている、預かっているんだと思っています。最近はビンテージ時計の持つ世界観に早くも行き着かれた若い皆さんが多いことに感心しきりです。是非、自分だけの一本に出会ってほしいと思います。修理もオーバーホール、電池交換、ベルト交換など年代に関わらず出来る限り承っていますのでお気軽にご相談ください」