「うちは麺のしなやかさと喉越しのよさのバランスがよい山形県産蕎麦粉の『二八そば』で勝負しています。蕎麦が看板品ではありますが、蕎麦を食べに来てたまたま注文したおつまみの美味しさにも満足していただけるよう、しっかりいいものを提供します。他のおつまみも食べてみたいからとまた足を運んでいただける店にしたいと思っています」
大学時代、司法試験合格を目指す法学部の学生だった店長の鈴木伴明さん。人と接すること、料理づくりが好きだったことから始めた大手居酒屋チェーンのアルバイトで飲食業にのめり込んでいったそうです。
「目の前のお客さんの嬉しい反応に喜んだり、ときにうまくいかなくて落ち込んだり。料理づくりにしても接客にしても自分が頑張った結果を日々感じながら努力できるところが飲食業の面白さ。僕の性分には合っているんだと思います。大きな店でしたが常連さんに可愛がってもらい、プライベートで出掛けることもありました。自分はこの道で生きていこう、そう決めました」
大学は中退し、4年間アルバイトながら真剣に働き続けました。そこでの働く姿勢を評価してくれた人のつながりから声が掛かり、若いながらに新規出店のバーや居酒屋にて店づくりや経営もしっかり経験しました。その後、同店を展開する経営者に声を掛けられ、他店舗の店長を経てここ「縁」の店長に就任しています。
「僕はこれまで人とのご縁でここまで来られました。ここでもお客さまとのご縁を大事に育てていきたいんです。自然と顔見知りになって『いらっしゃいませ』ではなく『こんにちは』『こんばんは』でお迎えできるように。気づいたらまた来ちゃった、通り掛かったらついつい入っちゃう、そう言っていただける店にすることが目標です」
知れば知るほど難しさと面白さを実感しているという蕎麦づくりを始め、天ぷら、種類豊富な一品料理の調理と向き合うなか、なかなかお客さまのいる店内には顔を出せず、自身の大好きな接客業務はもっぱらスタッフがメイン、いつも厨房でうずうずしているそうです。
「お客さまとなかなかゆっくりお話が出来ず残念ですが、美味しそうに楽しそうに召し上がっている様子を眺めながらの調理が日常の喜びです」
自店のコンセプトを大事にしながらもこだわり過ぎず、地元のお客さまの声を感じながら柔軟に店づくりを進めていこうと考えています。
「蕎麦屋らしく旬にこだわりながらも、カジュアルな居酒屋メニューも充実させて若者に足を運んでほしいと思います。うちをきっかけに若い世代に蕎麦屋飲みの楽しさを覚えてもらえたら。経堂らしい蕎麦屋像はまだまだ手探り、でも今はこれからが楽しみで仕方ありません」