「クラフトビールは小規模の醸造所が多く、規模も生産量も限られたものです。それ故の希少性だったり、多様性だったりが魅力です。生産者の人柄、想い、ストーリーがあってこの1杯が出来ている。味の確立された大手ビールとは異なり、未知の要素がたくさん。もしかしたら一期一会になるかもしれないクラフトビールとお客さんを引き合わせることがやりがいです」
オーナーの横田さんは飲食業界20年以上という経歴の持ち主。調理の技術を身につけたいと専門学校ではフレンチを専攻。料理店に就職したものの、修行という名の厳しい環境に納得出来ず、マネージャー業を極めようと方向転換。現在は他区にてオーストラリア、ニュージーランドに特化したレストランと醸造所直結のクラフトビール店を経営、さらにここ若林で出店する運びとなりました。
「実はここの前の店のオーナーと知人なんです。やむなく閉店したのですが、地元にとても愛された郷土料理店でした。『雰囲気やメニューは変わったけれどまたいい店が出来たね』と言ってもらえるようになりたい、といつも思っています」
自店のクラフトビールを始め、横田さん出身の秩父市の醸造所と区内の人気醸造所のクラフトビールなどを合わせて、定番を残し、不定期で変更しながら常時8種類を提供しています。
「メニューにそれぞれの味の特徴を記載していますが、自然とお客さんとの会話が生まれるのがクラフトビールならではですね。『どんな味がお好みですか』が糸口になって会話はどんどん広がります。クラフトビール通も、クラフトビールデビューの方にも楽しんでいただきたいです。小さいグラスもありますから全種類制覇されていく方もいらっしゃいますよ」
まずはお通し、オーストラリアの特産品マカデミアナッツの専用クラッカーでの殻割りからスタート。珍しいカンガルーやワ二の料理、レバーフライや秩父市の食材を使ったおつまみ、クラフトビールの泡を活用したクラフトビール屋ならではのメニューも人気です。ワインで作ったレモンサワーやクラフトジンも扱っています。
「我ながらコンセプトがとっちらかっているかなって(笑)。でも、お客さんが喜んでくれるのが一番ですから。こだわりというなら美味しければいいというところですね」
カウンターでは一人客がスタッフとおしゃべり、そして大きなガラス窓にペタッと手をつけて世田谷線を眺める子どもを見ながらクラフトビールをゆっくり楽しんでいるお父さんお母さんの姿も見られます。
「気取った店ではないので、遠慮なく子連れでも来てほしいですね。まだまだこれからですが、若林らしいいい店のひとつになれるよう頑張っていきます」