「1つの地酒が出来上がるまでにはたくさんの物語があります。僕の言葉でその酒蔵のはなしや蔵元さんの思いをお伝えしています。お客さんにいいお酒をたくさん知ってもらい、好きになってもらう橋渡しをすることが自分の役割。やりがいを感じています」
丁寧な商品説明と接客を信条に店を切り盛りする若き店長高柳周平さん、服飾の専門学校卒業後、海外でのテーラー経験も積んだファッション業界からアートギャラリー勤務、そこからまったく異なる酒屋業に飛び込んだ経歴の持ち主。もともと大のお酒好きではあったものの自身の職にと思い立った発端は旅先での地酒との出会いでした。
「時間に追われた働き方を小休止して日本全国を2年かけて働きながら回っていました。行く土地土地で出会った地酒がどれも美味しくて心に染みました。また、そこにいる人たちが教えてくれる地酒話がどれも興味深くて。いつしか地酒のことをもっと知りたいと思う自分がいました」
地酒を生んだ歴史、地酒を誇りに思う地元の人々の思い、そして地酒をきっかけに会話が弾む楽しい時間や空間、そこから生まれるご縁。自分自身が惚れ込んだ地酒文化を盛り上げるべく、店内に並ぶ日本酒、焼酎そしてビール、泡盛、ワインと数え切れない酒の知識を深めることに精進しています。
「お酒の味の感じ方は人それぞれです。あくまで『僕はこう思う』というオススメになりますが、僕との会話から『飲んでみようかな』とご購入いただけると嬉しいですね」
「籠屋」醸造のオリジナルクラフトビールを始めオススメの地酒が日替わりで楽しめる『角打ち』風な店奥の試飲スペースは隣客同士のちょっとした会話やスタッフとの酒談義が楽しめる粋なコミュニケーション空間となっています。ディスプレイされたセンスのいいアート系のポスターや本に高柳さんの思いが垣間見られます。
「文化のしっかりしたお酒とアート、ファッションは親和性が高いとずっと感じていました。僕の経験を生かして、いつか双方の文化をいっしょに組み合わせて新しいご提案ができたらと思っています」
下高井戸商店街に「まちの酒屋さん」が出来たのは6年ぶりとのこと。地元の方々に喜ばれ、温かく迎えてもらえた分、期待を裏切りたくないという思いはひとしおです。
「大好きなお酒と優しい地元のお客さんに囲まれておかげさまで楽しい毎日を送らせていただいています。『お酒のことは籠屋に』が下高井戸の合言葉になるような、愛され頼られる店になるよう頑張ります」