「食材の組み合わせ、火入れ、ソースづくり、盛り付け、すべてを自分でこだわり尽くして創作したメニューをベストのタイミングで目の前のお客さんに召し上がっていただける。自分たちの店を持った醍醐味を日々実感しています」
オーナーシェフの池田邦彦さんは洋食に慣れ親しんで育ちました。お母さまのつくる家庭料理はすべていちから手作りの洋食がメイン、焼きたてのパンにピカタやビーフシチューといったレストランのようなメニューが日常的に食卓に並んでいたそうです。
「母方の祖父は帝国ホテルの料理長でした。小さい頃家族で訪れたレストランで目にする高いコック帽の風格ある姿がかっこよくて。子ども心に憧れていました。この道への原風景です」
学生時代は本格的にバスケットボールに打ち込み、そのプロを目指す選択もありながら高校卒業を前に自ら決意したのはフランス料理の一流の料理人になること。専門学校で学んだ後、就職先のハイアットリージェンシーでは二つ星「キュイジーヌミッシェルトロワグロ」、本場フランスの三つ星「トロワグロ」本店などに配属され、フランス人シェフのもと貴重な経験を積みました。
「通勤途中にフランス語を必死に勉強しながら働いていました。すべてを吸収したくて無我夢中の毎日、自分の世界観を豊かに表現していくシェフたちの才能に触れ、フランス料理の奥深さにどんどん引き込まれました」
同ホテルの料理長、その後西麻布の名店でも経験を積み念願の独立へ。住宅地の物件を選んだのは都会の立地でない分、ハイクオリティなフランス料理をカジュアルにリーズナブルに提供したいと考えたから。調理のライブ感も味わってもらいたい、お客さんを感じながら料理をつくりたいとオープンキッチンにもこだわりました。料理の説明から他愛もない話までカウンター越しのお客さまとの会話も日々の楽しみのひとつだそうです。
「うちは基本すべてコースで召し上がっていただいています。料理の流れでそれぞれの料理の美味しさが引き立つよう、きっちり構成しています。目でも舌でもきっと感激いただけると思います」
足し算の料理といわれるフランス料理、無限大の美味しさを創作出来ることが池谷さんの探究心をかき立て続けています。月替わりに変えているコースメニュー、新しいソースやメニューの開発にパティシエであるマダムのアドバイスが欠かせないそうです。
「妻のおかげでひとりの感性で考えるより、幅広い表現が出来ているかなと思っています。地域のたくさんの皆さんに近くにいい店が出来てよかったと思っていただけるよう頑張ります」