「屋号komamoは3人の息子の頭文字をつなげたものです。普通の主婦だった自分が起業するきっかけをくれたのは子どもたちでした」
長男の齋藤幸来さん曰く「いつも動いているパワフルな人」というお母さんのひとみさん、マッサージの仕事をしながら女手ひとつで家計を支えるなか、毎年息子たちの誕生日を必ず手作りケーキで祝っていました。ある年、自身の一番好きなケーキ、シフォンケーキづくりに初挑戦、試行錯誤の末に出来上がったシフォンケーキに息子たちは大喜び。
「こんなに美味しいなら売ればいい、と突然息子たちが言い出したんです。もともと誰かのために料理をつくることが大好きな私には思いも寄らない嬉しい提案でした。完全予約制限定販売で小さくスタートし、40歳の誕生日に思い切って会社を立ち上げました」
物産展への出店も順調に増え、全国を回るなか『青森なのにアップルパイはないの』という声を多数聞くように。
「青森の魅力を伝えていきたいという思いも高まっていましたが、私自身がアップルパイに美味しい印象がなくて。じゃあ美味しいものを作ればいいよ、と息子たちにまた背中を押されました」
厳選材料、配合にこだわった生地に農家直送の収穫したてのりんごをたっぷり。商品開発に半年を費やし、ひとみさんが心から美味しいと思える、りんごを主役にした安全安心のアップルパイを完成させました。りんごのシャキッとした食感、豊かな風味に口溶けのいい生地、だから余計なアレンジは一切いらず。シンプルだからこその美味しさが光っています。今夏、幸来さんの大学進学のための上京を機に、東京への進出を果たしました。
「まちなかに豪華でおしゃれなケーキがあふれるなか、うちは至って素朴なアップルパイ。その価値観、素材のよさに気づいてリピートしてくださるお客さんが増えていて嬉しいです」
りんご畑をイメージした個室、採光豊かな広々とした個人宅の居間のような店舗空間では貝焼き味噌定食、パイカ定食など青森のB級グルメメニューもゆったり味わえます。
「長居大歓迎です。うちのフルコース、定食を食べて紅茶とアップルパイを食後にゆっくり堪能してもらえたら。せわしい日常をしばし忘れて青森で過ごしているような旅行気分になってもらいたいですね」
青森らしさをどう表現していくかはまだまだ道半ばだそう。青森のお酒やシードルを充実させたkomamoならではの「青森のバータイム」を提供したいと現在準備中です。
「うちをきっかけにもっと青森を知ってもらえたら。大きな目標ですが、この店を青森と三軒茶屋をつなぐアンテナショップのような存在に育てたいですね」