店の扉を開けるとオーナーシェフ串間さんの元気な挨拶「チャオ」と奥さまの優しい笑顔がお出迎え。そのウェルカムな雰囲気に初めて訪れるお客さんもひとりのお客さんも誰もが居心地の良さを確信します。
「一度きりの人生、みんな楽しいことをして生きていこうぜって思っています。イタリア人のどこか不揃いや雑でもヨシとするような美学や家族を大事にする生き方がかっこいいなって。どうにかイタリア人になれないものかとずっと思っているくらい（笑）」
料理上手なお母さまのつくる洋食メニューが大好きだった串間さんが料理人を志したのは小学生のとき。高校生になると部活に入らず、焼肉屋や洋食屋で3年間みっちりバイト、食材の下処理なども身に付けたそう。早く現場に出たいと料理の専門学校を1年のコースで卒業し、ヒルトンホテルで3年間フレンチの修行に。足し算で味を作り込むフレンチが自身の価値観とは合わず、次に選んだ修業先はイタリアンの名店。すっかり心奪われ、イタリアンの料理人としての道を歩むことを決意したそう。
「超有名店からリーズナブルな店まで15店舗を経験し、3年ほどイタリアにも渡り、働きながら15州を食べ歩いて郷土料理も学びました。自分が創りたい料理、届けたい料理はどのあたりだろう、見極めるのに気づいたら30年間です」
都会ではなく暮らしのまちで自身の集大成となる店を構えたいと昨年ここ八幡山で開業に至りました。本格イタリアンを気軽に楽しんでもらえる店にしたいとの思いを込めて、リストランテでもなくトラットリアでもなくピッツェリアを名乗ります。
「日本人のシェフって器用だからアレンジが得意。いいような悪いようなと思っています。僕は、例えばトマトソースをピザ用、パスタ用、メイン用と仕込みを変えるなど見えない手間暇はかけつつも、シンプルに素材の味がしっかり伝わるイタリアンを提供しています。うちは現地のめずらしい食材も取り入れていますから面白がって楽しんでもらえたら。今は直球のメニュー中心ですが、うちの味が認められてこのまちで定着したら変化球も投げたいなとワクワクしています（笑）」
美味しいのは当たりまえ、毎日来ても食べ飽きなくて、座っているだけで楽しくてほっとして。お客さんが行きたくなる理由を詰めこんだ店に育てていきたいそう。お誕生日にはシェフがイタリア語でのバースデーソングを歌って楽しませてくれます。
「日々、八幡山の人の温かさに感謝しています。『マンジャーレ、カンターレ、アモーレ』、食べて、歌って、愛して。イタリア人の僕の大好きな生き方を僕なりに発信していって、もっともっと楽しいまちに出来たら、なんて思っています。お皿の上の小さなイタリアの旅をお楽しみください」
