「会話を楽しんだお客さんとも、特に言葉を交わさなかったお客さんとも、帰るときに心の距離をほんの少し近づけることができていたら嬉しいですね。また会いたいなと思ってもらえる店の人間でありたいと思っています」
お隣の三軒茶屋で9年目を迎える内臓料理の店「MOZ」に続き大好きな三宿で満を持して開業したのがこの「MER」です。店主の大小原将紀さんは飲食の道20年のプロフェッショナル。スタッフ、お客さんとのいい関係づくりを何より大切にしてきました。
小さな頃から人好きで人を喜ばせることが大好き。今日の生き方の原風景は小学生時分の土曜日の家族へのカレーづくり。自分がつくった料理を喜んで食べてもらえることがたまらなく嬉しく、張り切って包丁を握っていたそうです。
高校卒業後、迷うことなく飲食の道に進み、都内の洋食店に就職しました。右も左もわからぬ若い大小原さんの将来を見据えて根気よく育ててくれた当時30代半ばだった店主が感謝してもしきれないこの道の先輩。その背中を追いかけて30歳までに必ず独立することを目標にワインの勉強も料理の研究も真摯に積み重ねたことが今日につながっています。
オフの日は趣味と仕事を兼ねてワインの合同試飲会や気になる店々の食べ歩きすることも少なくないそう。頭の真ん中にはいつも店への思いがあります。ソムリエとしての知識はもちろんのこと、これまで自身で飲んだワインは10,000本をくだらず。いつのまにかお客さんとの何気ない会話から人柄や性格を想像して好みの味ぴったりのワインを当てられるまでになりました。そして、幅広いジャンルの料理をオマージュして「MER」仕様に落とし込んだ創作料理はありそうでなかった、ここでしか味わえないものばかりです。
「居酒屋の刺し盛りのようにカルパッチョの盛り合わせがあったらいいなとか、夏でも食べたくなるさっぱりした冷製の明太子パスタがあったらいいなとか。自分たちが食べたい、美味しいと思うものはきっとお客さんも喜んでくれるはず。そう自信を持ってメニューを開発し、一切手を抜かず作品にしていきます」
「MOZ」ではスタッフとお客さんを集めて50人の大バーベキュー大会をすることも。いつのまにか育まれていく人の輪は大小原さんの人柄ゆえ。慌てずゆっくり「MER」も地元の人に愛される店に育てていきたいそうです。
「ここだったらとご家族や大切な人を連れて来てもらえる店にしていきたいです。『息子がよくお邪魔しているそうで』、なんてご両親にもお越しいただけたら感激です。ここが出来てよかったと三宿の皆さんに言ってもらえるように頑張ります。」