「妻がはまりだしたビカクシダの子株との出会いがきっかけでした。同じモノはふたつとない個性的なフォルム、管理次第で目に見えて成長してくれるさまが面白くて可愛らしくてどんどん夢中に。自分のなかで何かがはじけたという感覚でしたね」
小さな頃からイラストや絵、マンガを描くことが大好きだった杉田さん、服飾デザインを手掛けたく、アパレル業界に進みました。有名なアメリカンカジュアル専門店でバイヤー職を経験したのち、ミシンや縫製技術も身に付けながら、会社のバックアップのもとデザインを学び上げました。その後、下北沢のセレクトショップに転職。すでにインターネットで始めていた植物の本格的な扱いにも心が動かされ、デザイン関連の仕事をこなしながら実店舗を持つことを決心しました。
「植物が増えすぎてもう家に置けなくなったという理由もありましたが(笑)。現物を観たいとおっしゃってくれるお客さんが増えたこともあり、コミュニティの場を持ちたいなと思いました。いっしょに自分が手掛けた洋服や小物も販売して、いろんな目的で店を訪ねてもらえたら楽しいなって」
メインとなるビカクシダは別名コウモリラン。東南アジア、オセアニア、アフリカ、南米の熱帯地域を原産とする着生植物で、現地の園芸家から仕入れています。胞子と子株で培養でき、一般の植物同様、特別な技術はなくても愛情をかけて水や温度を気をつけてあげれば誰にでも楽しめる植物だそう。壁に掛けて育てられることから、小さな子どもやペットがいても楽しめるインテリアとして昨今人気が上がっています。実店舗はまだまだ希少で、遠方からのお客さんも少なくないそうです。
「基本、花や植物という商品は販売するところまで、と思いますが、ビカクシダなどは育てて増やすことができるので、お客さんとも『シダ仲間』としてお付き合いが続くのが面白いところです。発育の情報交換をしたり、相談に乗ったり。よその子株をお裾分けしていただいたり、過剰分をおまけで差し上げたりとお互い手を掛けた子たちですから、ただのモノのやりとりとは違うんです。オリジナルデザインの板付けを楽しみに来てくださる方も多いですね」
大袋ではあまりがちな土や肥料を図り売りしたり、花のスワッグのワークショップを開催したり、近所の方にも利用していただきやすい店づくりを目下模索中です。
「店内に入られて、見慣れぬ植物にびっくりされるお客さんもたまにいらっしゃいますが、インテリア性がとても高く、何十年と育つので『根付く』という意味でお祝いのプレゼントに選ばれる方も増えています。是非のぞいてみてくださいね」