「酵素風呂の心地よさって言葉で伝えにくいのですが、普通のお風呂のような水の抵抗はないし、砂風呂のような重さもない。ふかふかと軽いものに全身が包まれて、身体の表面ではなく内臓からじんわり温まっていく感覚は独特です。自然の力ってすごいです」
オーナーの秋山さんは大学の心理学科を卒業後、専門学校にも通学し、精神保健福祉士の資格を取得。長年福祉の分野で働き、B型就労支援事業所の施設長まで勤めました。その後、さまざまな問題を抱えた人への電話相談員など、人の気持ちに寄り添う経験を重ねて来ました。
「やりがいもあって楽しくいい職場だったんです。でも歳を重ね、まったく違う新しい世界に挑戦してみたくなり、私に出来ることはと考えた時、真っ先に酵素風呂の存在が浮かびました。自分が股関節痛や婦人科系の不調に悩まされていたとき出会った酵素風呂に助けられました。自分が心からいいと思ったものなら人に自信を持ってオススメできると」
サービスを受ける側から施す側へ。酵素についての知識を必死で習得しながら、酵素風呂の店に勤務し、1年半修行。運良く大好きな松陰神社で物件が見つかり、小さなビルの2階にサロンを持つことができました。
「福祉分野に長く関わり、頑張っているたくさんの人と会ってきました。この生きづらい世の中で皆がギリギリだから、意識的に自分を休ませて大事にしないと誰でも心の安定なんてすぐ崩れてしまうんです。ここならいつもの商店街のお買い物のついでに寄ってもらうこともできるなって。仕事や家庭から離れてゆっくりしてほしいですね。もし相談でも愚痴でもあれば私の出番です。私に話すことで心がすっきりしてもらえたら嬉しいなって思っています」
お客さまをお迎えするために重労働な酵素風呂の運営管理。毎晩営業後は空気のたっぷり入ったふわふわのぬかを目指して、愛情を込めて新しいぬかに水を加え、シャベルで撹拌すること40分。
「就労支援時代の仲間に働く場として撹拌作業をお願い出来たらなって考えています。また、使用した米ぬかを堆肥処理して農家さんに差し上げて農地に戻す仕組みも構築したい。夢は広がっています」
疲労回復、免疫向上、ダイエット作用や美肌効果などさまざまな効果が期待される酵素風呂。さらに熟練の手技を駆使する現役エステシャンのお母さまによるエステ、マッサージ、黄土よもぎ蒸しもメニューに取り揃え、気軽な「まちの癒やしの空間」を目指しています。
「まだまだ認知がされていない温浴法ですが、歴史は古く、巣鴨では高齢の方が集う酵素風呂施設もあるんですよ。ここをたくさんの人に知ってもらって疲れたら『ふわり』に行こう、気分転換に『ふわり』に行こうが合言葉になったら嬉しいな。昔からある銭湯的な存在になれたらと思っています」