「まさか還暦手前でおむすび屋さんを始めるなんて人生わからないものですね(笑)」
オーナーの斎藤さん、若かりし頃はサラリーマン。退職して家業の老舗呉服店を継承したものの時代の波に勝てず店は閉じることに。その後イベント会社経営や民泊経営を手掛けながら、お隣三軒茶屋の商店街理事としてまちづくりに取り組んで今日に至ります。
「この場所は昭和から続いた僕も大好きな喫茶店でした。まちづくりでお世話になったここのマスターが体調を悪くされて引退する際『斎藤さんがここで何かお店をやってくれたらな』と声を掛けてくれて。いつかまた自分の店を持ちたいと秘めていた心の奥の気持ちに火がつきました」
人が集まることが大好きだから飲食店一択、そして自身の好物おむすびでの勝負を決めました。海苔はパリパリ別添え、具材は美味しさを目でも楽しんでもらえるよう上乗せに、と自身の「理想のおむすび」をカタチにしました。そして何より「食」を扱う以上、品質のよさにこだわりを出したかったそう。
「僕自身は正直品質云々なんて考えずに食べてきた昭和の元気な人間 (笑)。でも、世の中昔はなかった身体や心の不調やアレルギー疾患がどんどん増えていて、今の子どもたちの将来は大丈夫かなってずっと気掛かりでした。食育というとちょっと大げさかもしれませんが、この店が皆さんの健康な身体づくりの一助になれたら思いました」
厳選した契約農家から直送の無農薬有機米使用したおにぎりに、米粉使用のグルテンフリーの揚げものや手作り豆腐など店内調理の手作りメニューがウリ。そして人気のランチセットもアルコールのついたお疲れさまセットも990円で提供とお値段の優しさもこだわりたいところだそう。
「サラリーマンのお財布事情は僕自身経験済みなので(笑)、どうしても1000円以下で楽しんでほしくて今のところはなんとか頑張っています。特に豪華なメニューはありませんが、日常で食べたいけれど家ではなかなかつくらない、というものを手間ひま惜しまず素材重視で提供しています。なにせ駅直結0秒の立地ですから、地域の方に、そして通勤利用の方にも気軽にふらっと足を運んでいただける存在の店になりたいと思っています」
まちの居酒屋や食堂とは異なる、落ち着いてゆっくり食事もお酒も楽しめる空間。ほどよい賑やかさは心地良く、女性の一人客や家族連れも多いというのも納得です。
「御家族でよく来てくれる幼稚園のお子さんがここを通って『この店、おむすびがすごく美味しいんだよ』と友だちに紹介してくれているのが聞こえてきて感激しちゃいました。日中はおむすびのテイクアウトも出来ますので、是非一度食べてほしいです。前店の喫茶店にあやかって息の長いお店に育てていきます」