店主の作田さんは元大手自動車メーカーの設計士という異業種からの転身。パン屋としての自身の気質は『パン職人』というより『パンのエンジニア』がしっくりくるそう。科学的根拠に基づいてレシピの組み立てや材料の配合も進めています。
「当時、設計の仕事は性に合っていたものの大手企業でも先行き不透明な時代で、自分の手にしっかり職をつけて生きていかねばと考えるように。子どもの頃からパンが好きだから、パン屋になって、とびきり美味しいパンを作ってみたいと思いました」
地元のまちのパン屋で修行をスタート。人形町ロイヤルパークを経て、次々と声が掛かり、気づけば8軒ものホテルやパン屋を渡り歩き、22年間腕を磨き上げました。
「当たりまえのことではあるのですが、いい材料から本物の美味しさが生まれることを確信。胸を張って毎日食べても大丈夫と断言できる安全安心なパンづくりに特化していこう、嘘がない美味しいパン屋であろうと決めました」
満を持しての独立。目黒区に「ル・ビリーヌ」を開業、続いて2022年ここ上町に「カランコロン」を開業しました。薬膳やスーパーフードに造詣が深い奥さまと二人三脚でのパンづくり、パン生地のみならず、フィリングも厳選素材、厳選調味料で店内調理しています。
大人気の限定10食のモーニングセットは、オムレツや自家製ベーコン、奥さまの手作り惣菜、無農薬減農薬野菜のサラダ、おかわりまでできるパンの盛り合わせを880円で提供。また、仕込みで店内にて作業をしているから、と深夜12時まで店を開けています。お酒も提供し、帰宅の遅い地域の人の大事な食事処の役割も果たしています。
「自分のパンで誰かの役に立ちたいって思っています。商売だけれど利益や効率ありきでは考えたくない。アレルギーや病気で食事制限のある方は是非相談してもらえれば。塩分を抜いたり、豆乳で代用したり、米粉パンをつくったりといろいろやらせてもらっています。自分の腕の見せどころです」
あっと驚く「パンのかき氷」は、余ったパンの再生を考え抜いた作田さんのひらめきから生まれたモノ。かぼちゃやビーツ、炭が練り込まれたパンをそれぞれパン粉に加工し凍らせ氷に見立て、アイスクリームやフルーツといただきます。そのサクサク感とパンの甘味は氷以上に味わい深く、お腹も満たされます。
「丹精込めたパンを捨てることのつらさはパン屋ならみな同じ気持ちでしょうから、ほかのパン屋に是非真似して取り組んでもらいたいなとも思っています。本当はパン屋同士でパンの再生のアイデアを持ち寄りたいですね。人の健康、環境のこと、作り手としてしっかり取り組みながら美味しいパンを表現していきます」