「コーヒー豆って見た目も地味だし、色味や大きさも変わらないけれど、それぞれには語り尽くせない背景があります。美味しさを引き出すことはもちろん、お客さんに小さなこの子のたちの物語をお届けすることがやりがいでもあります。オリジナルのパッケージにとことんこだわったり、月刊の瓦版を発行したりと発信は欠かしません。可愛い我が子をちゃんとお披露目したいみたいな感情かな(笑)」
丁寧な商品説明も飾らない接客も同店のいつもの風景の一コマ。知識豊富なこだわりの専門店でありながら、気難しい雰囲気は一切ない「まちの珈琲豆屋さん」に徹しています。お客さんへの感謝を持ちながら家具屋を営んでいた当時のご両親の姿勢が清水さん姉妹の店づくりの原点になっているそう。
同店の「注文を受けてから焙煎するオーダーメイド自家焙煎」という希少性に強く惹かれ、お姉さんが先代に弟子入りしたのが25年前。焙煎作業の奥深さにはまり一生の仕事にすることを決意。その後、妹さんと宮下さんも加わり、2011年には先代より事業継承。三人心をひとつに切磋琢磨しながら美味しいコーヒーづくりを追求し続けています。
ゴールはないと言い切る、力仕事でありながらも繊細さを要する焙煎技術の更なる高みを目指しながら、今情熱を注いでいるのが生産者から直接買い付けるダイレクトトレード。現地のチューターを介して生産者とつながり、生産者とオンラインで会話も重ねています。どこで誰が作っているかがわかる品を提供することで安全安心をお客さんに届けられる、同時に、現地の生産者にきちんとその対価が届くようにしたい、というかねてからの思いがあります。閉鎖的とも言われる業界の決まった流通経路に風穴を開けていきたいとも考えているそう。
「2年前に永年の念願が叶いエチオピアで生産者さんに会うことができました。炎天下のなか、一粒一粒ずつ手作業で積んでいく気の遠くなる作業に頭が下がりました。労働対価のあまりの低さに作業効率のいいバンブー農家などに転身してしまう方がだんだん増えていることも知りました。私たちがコーヒー豆屋を出来ているのも、美味しいコーヒーが飲めるのも当たり前ではないんですよね。お客さんとつながるように生産者さんともつながって、大事なコーヒー豆とその思いのバトンをしっかりつながなければ、です」
「長くこうしてお店をしているとまちの皆さんと月日を重ねている実感があります。親御さんに連れられていた小さな子が大人になっても来てくれたり、遠くに越した方がわざわざ顔を出してくれると、なんとも言えないあたたかい気持ちになります。もっといろんな主要生産地に足を運びたい、オリジナル焙煎機も製作したいなど夢もありますが、大好きな焙煎をしながらお客さんとの優しい日常を細く長く続けていけることが何よりの幸せです」