「僕の声って通るらしくて。『駅のそばまで大将の掛け声が聞こえてきたから来ちゃったよ』なんて言われることも(笑)。わざわざ足を運んでいただけることへの感謝が無意識に声のボリュームに。初めてのお客さんで掛け声を聞いてちょっとびっくりされている方もいます(笑)」
大将の中野さんは和食の道一筋。服部栄養士専門学校で和食を学び、お父さまの営む国分寺の和食居酒屋で20年腕を振るってきました。

「そろそろと独立を考えたタイミングで、母がここで30年間営んでいたスナックを体調を崩して閉じることに。居抜きで開業することができました。しばらくは母のつながりで来てくださるお客さんばかりでしたが、3年が経ったぐらいかな、新しいお客さんが多くなり、旧知のお客さんたちに『自分の力だね』って言ってもらえたときは嬉しかったですね」

和食をベースとした得意の魚料理に特化しながらもメニューは幅広く、開業時からの一番人気である「ちとからコロッケ」を始め、「家庭ではなかなか作らない、手間ひまかけたプロならではのメニューと味」を追求しています。サラダ5種類のドレッシングやソース、味噌田楽の玉味噌などの調味料もすべて一からの手作りを貫いています。また、魚と並んで主役となる旬の野菜は決まって、お客さんでもある地元の池亀農園から仕入れています。

「採れたてを店まで直接届けてくれます。鮮度抜群、味わいも別格なので出来るだけ素材そのままを生かせるメニューを考えますね。『ずいぶん美味しい野菜だね』、『あの池亀さんのところのですよ』なんて会話が弾むことも。信頼できる身近な生産者の地元の旬の野菜を地元の方に提供できるなんて環境にも身体にもいいことしかないです」

屋号の「話食」は中野さんが人と話すのが好きだから。そして楽しい企画ごとも大好き。ご自身の釣り好きをきっかけに年に1度釣り大会開催。お客さんがその友人を誘い合い気づけば40人ぐらいが参加する大所帯のイベントに。店に戻って釣れた魚は大将が腕を振るい、皆で楽しみます。
「SNS宣伝が全盛の世で、ここはずっとリアルな口コミ、つながりで今があります。せっかくご縁がつながったお客さんを大事にしたいからお料理を提供するだけではなく、何かをしたくなっちゃうんです。僕のおかげと自負しているのですが(笑)、ここで知り合ったお客さん同士が3組も結婚されているんですよ」

お客さんがここに来て元気になってもらうことこそが大将の店づくりの矜持。子連れのお母さんには気兼ねなく子どもと過ごしてリフレッシュしてほしい、一人暮らしの人には実家のような安らぎを感じてほしい。だからまずは絶対自身が笑顔でお迎えすることから。

「体力はだんだんキツくなっていますが(笑)、毎日楽しいです。しっかり後進を育てて数十年後には料理は任せて、銭湯の番台さんのように僕は座ってお客さんとずっとお話していられたら最高ですね(笑)」

