「ちゃこちゃん」「えりちゃん」と呼び合う姉妹のような仲良しオーナー母娘。天下一品の明るさ、飾らなさで、店主とお客さんの垣根を越え、日々、人を繋いでいます。

久子さんが同店を開業したのは、茨城での子育てが終わった50代にご主人の転勤で自身が生まれ育った大好きな世田谷区に戻れたことがきっかけ。茨城時代はPTA会長始め幅広い地域のボランティア活動とともに教員免許も持つ得意の英語で子ども向け英会話教室の講師を務めるなど、地域の子どもと大人に関わる活動を重ねてきました。
「こんな元気な私ですが、高校生の時に難病になり、長期休学も経験し、寂しく辛い思いをしました。それを取り戻すじゃないけれど、たくさんの人と知り合いたし、やりたいことはどんどんチャレンジしないともったいないと思っちゃうんです」

開業の大事な相棒は、「本物の味を覚えてほしい」といちからの手作りが当たり前の環境で育ち、「母の料理が世界一美味しい」と話す愛娘のえりさん。就職先の千疋屋で身につけた洋食やデザートづくりの技術とセンスを活かし、家庭料理でありながら家庭では出しきれない同店の味を生んでいます。ソースもドレッシングもすべて手作り、区内近隣に農園を借りて2人で育てた無農薬野菜を取り入れるなど、食べた人の身体を思い、手間ひまかけるは惜しみません。


同店の代名詞とも言える「子ども食堂」は9年目を迎えました。大人は300円、子どもは無料、カレー会食回とお弁当の配食回を合わせて月に3回定期開催。無料の学習支援や絵本の読み聞かせも行っています。用意するお弁当は毎回70食近く。同じ思いを持つ仲間と近隣の日大の大学生など10人ほどのボランティアのマンパワー、商店街や近所の人、いつものお客さんからの食材の寄付で活動が継続しています。

「たまたま活動を見たお客さんがスタッフ側になってくれたり、なかには『手伝わせてください』と突然尋ねて来られる方がいたり(笑)。流れとつながりでここまでやってこられました。食べる皆さんの顔を思い浮かべながら、できる限り旬のものを生かしてメニューを考えるのが楽しみですね。子どもたちからの『美味しかったよ』『また作って』の言葉に疲れが吹っ飛びます」

くしくも区が運行する予約制の乗合ワゴンの停留所のひとつが「アトリエそら豆」駅。これからは遠方の高齢の皆さんにも来店いただいて集まる場にできたら、と久子さんの思いは広がります。
「一人暮らしの年配の方が年々増えていると実感しています。ここでたくさん話して笑って、商店街でお買い物を楽しんでもらえたら。子ども達とも触れ合ってほしいと思っています。ああしたい、こうしたいばかりの私ですが、世田谷に恩返しというか、誰かの役に立っているかなと思うと頑張れちゃいます。我が家のリビングみたいな店ですから気兼ねはまったくいりません(笑)、ぜひ遊びに来てください」



