大阪生まれ大阪育ちの大将の西口さん、品質自慢の肉屋や魚屋、八百屋が実家の近所にあり、小さな頃から食に恵まれ、食べることへの興味が強かったと振り返ります。苦手な食材を自分で食べられるように調理してみたり、お頭付きの鯛の塩焼きが誕生日の何よりの楽しみだったり。自ずと料理人を目指し、高校時代のアルバイト先の地元チェーンの人気居酒屋にそのまま就職、日本料理の本格修行を積みたいとその後ひとり大将の寿司割烹に弟子入りしました。

「せっかく日本人に生まれたのだから、日本料理を極めようとの思いは強くありました。初めて包丁を持たせてもらい、一品料理、天ぷら、箱寿司など、自分のものにしようと必死な毎日が今の土台になっています。出張で店にいらっしゃったお客さんから、当時の東京の話を聞く機会も多く、この目で築地市場を見たい、江戸前寿司も学びたいという思いが強くなり、上京を決めました」

中目黒の割烹に入り、関西とはまた違う東京らしい食材選びや料理を学び、12年間腕を磨き上げ、いざ独立を考えた時期にコロナ禍に。ならばと思い切って蕎麦畑が豊かな青森県に渡り住み、以前から挑戦してみたかったそばの手打ちを1年間学びました。

「関西人は納豆を好まないとか、東西でうどんの汁が違うとか、大阪、東京でも食文化の違いはありますが、青森の郷土料理も新鮮で、まだまだ知らない食文化があると実感、カルチャーショックでした。そばの技術はもちろん、いい経験になりました」

落ち着いた暮らしのまちの駅から離れた場所でこじんまり、という自身の理想にぴったりの物件に出会い、一昨年満を持してここで開業となりました。安全安心な旬のいい食材を使うことは美味しくて身体にいいこと、自信を持って提供する料理でお客さまに健康につなげることも日々意識していることのひとつ。だから定番はわずか、ほとんどすべてその日の食材次第でメニューを決めています。例えば穴子があれば、焼き物、天ぷら、湯引きと調理はリクエストできます。
縁ある地域からの産地直送の食材にこだわるなか、お客さまを通して縁が生まれた江戸川区の農家さんに旬の朝どれ野菜を定期で店に直接届けてもらっています。

「一般に流通しているものと比べられない美味しさです。農家さんにお任せの食材ですから何と出会えるかは受け取ってのお楽しみ。毎回宿題を出されるようで(笑)、腕がなりますね。お客さまも『今日は何が届いたの』と、いらしてからのお楽しみにされています。」
西口さんはなるべく近所のお店の商品を活用することも大事にしています。出汁は「宮崎かつおぶし店」を活用、デザートには「ONIVA」が扱う水羊羹など。

「お代金をいただいているのに『ありがとう』までいただけて、また来てくださるからお客さまにまた会えて話せる毎日が楽しいです。つくづくここで開業してよかったと思っています。お客さまはもちろん、ご近所のお店の皆さんとも仲良く末長く店を頑張っていきたいです」


