「若者が肩肘はらずに、でもゆっくり落ち着いていいお酒を飲める場所は意外と少ないんです。オーセンティックなバーは行きにくいし、元気な居酒屋さんやショットバーでは落ち着けない。僕自身がずっとほしかった場所を体現中です」
オーナーバーテンダーとして店に立つ藤井さんはわずか22歳、これまで自らの意思でグローバルな人生を歩んできました。撮影会社やスタジオの経営などカメラマン、クリエイターの顔も持ち合わせています。
長崎県の離島の出身でご実家は漁師。豊かな食材に囲まれ、小さな頃から料理づくりに夢中になり、小学1年生の誕生日プレゼントには懇願して料理包丁を買ってもらったほど。料理づくりを独学で極めるなか、中学校卒業と同時に片道切符を片手にバックパックで海外を旅しました。
「田舎の生活も窮屈に感じていましたし、広い世界に自分をポンと投じてみたくて。所持金もほぼなし、今思えば、怖いもの知らずですね」
物怖じしない性分を武器に、飲食店で働いたり、ときには路上で絵を描いて売って生計を立てたり。フィリピンでのストリートチルドレンとのボランティア活動も忘れられない経験だそう。一時帰国をしながら、ヨーロッパ、アジア、オセアニアのさまざまな国をひとり渡り歩き、数え切れない人々とふれ合ってきました。
「コロナ禍がなければ、まだ世界のどこかにいたと思います。旅をするなか、料理が好きなのはその先に喜ぶ人の顔が浮かぶからなんだ、自分は人と関わるのが大好きなんだと改めて気づかされました」
帰国後、以前よりその文化に興味を持っていたバーに勤務、バーテンダーとしてお酒の知識と技術を身に付けるなか、最初のお店はバーにしたいと決意しました。
「ときにはいいお酒を片手に若者も日常から離れて夢や悩みをさりげなく話せる場がつくりたいという思いにバーの落ち着いた世界観が合致しました。僕の生き様も誰かの刺激になったらいいなって」
カウンターの後ろにはウイスキーだけで常時70種類以上という垂涎の国内外の銘酒がずらり。オリジナルカクテルやビールも楽しめる同店には若者のみならず、お酒をよく知る世代のお客さまも足を運んでいます。
「コーヒーメニューやデザートもあり、Wi-Fiも完備していますので夜カフェとしても使っていただけたらと思っています。お客さまと共に居心地のいい、使い勝手のいい、そしてとびきり雰囲気のいいバーに育てていきます」