「居心地がいいから、楽しいから、とお酒の飲めない女性まで足を運んでくださっているのが嬉しくてたまらないです。想像していた以上にいい場がつくれているのは気持ちのいいお客さんと11人いるスタッフみんなのお陰と感謝しています」
オーナーの明代さんは建設会社を立ち上げ成功させたお父さまの背中を見て育ち、小さな頃から自分で商売をして社長になるという目標を持っていたそう。美容の専門学校生時代に軽くバイトで始めた接客業にすっかり魅せられ、この道一本で生きていくことを決意しました。
「人が好き、話すのが好き、そしてお酒の場が好き。好きなことをして稼げるなんて天職に出会ってしまった、と思いました(笑)。両親は心配しつつも、やると決めたらやり抜く私の性格を知ってか見守ってくれました。以来ずっと応援してくれています」
人間関係も競争も厳しい世界ゆえの苦労はあれど、一期一会のお客さんと接する日々の緊張感、認められ指名をもらえるやりがい、さまざまな世界の人と出会える楽しさは格別。その全てが生きた人生勉強と10年間ほぼ休むことなくスキルを磨き上げていきました。
「自分が楽しみたくて始めた仕事でしたが、いつしかお客さんの幸せを本気で願う自分がいました」
独立前に居酒屋でバイトをしていたのがここ経堂。顔見知りも増え、まちへの親しみが増すなか、ひとのご縁でこの物件と出会うことができました。目も心も行き届く小さな空間でお客さん全員と会話を楽しみたいから、カラオケも置かず、料理もなし。接客力で勝負することを以前から決めていたそうです。
「スタッフに生き生き働いていてもらうことでお客さんにも居心地のいい空気を感じてもらえる、これまでの経験で確信しています。そこにいる人みなが楽しい場にしないと、です。スタッフは実は私が飲み屋で隣り合わせた子たち。明るく気持ちのいい子たちをナンパして集めました(笑)」
ボトルキープのお値段もぐっと抑え、時間無制限制。お客さんはお腹がすくと真向かいの中華料理さんで注文して届けてもらったり、宅配を取ったり。いろんな人に毎日でも通ってほしいとの思い通り、気づけば老若男女が集まるバーに。席が足りず立ち飲みする人もしばしば。年配の男性と学生が政治経済の話で盛り上がっていたり、お客さん同士で別のお店に出掛ける約束を取り付けていたり。カウンター越しにお客さんの仲よさそうなコミュニケーション光景を見るたび、店を持てた幸せを感じるそう。
「実は離婚経験があって子どもがいるんです。今は一緒に住んでいないのですが、子どもが働ける年齢になったら親子で一緒にここに立ちたいという夢もあります。もっとたくさんの人にここを知ってもらって『いい店』に育てていきたいと思います。頑張ります」