「水がきれいな富山県、うちの母もそうですがだいたいの家庭は地下水で料理もしていました。富山湾の魚も美味しいし米も美味しい。豊かな自然の恵みのなかで育ちました。自分の舌の感覚が繊細なのも、そこからかなと思っています」
長井さんはもともと美容師として上京し、働いていました。東京で生活していくにはあまりに厳しい当時の収入に、手に別の職をつけて生きていこうと料理人になることを決意したそう。人の縁に導かれるまま、青山のレストランから深夜のラーメン店、有楽町の居酒屋、焼き鳥専門店などで働き続けました。料理人、店長経験を積むなか、現オーナーとの縁が生まれここ等々力のお好み焼きや「鉄板屋 森太郎」にて10年間腕を振るってきました。このたび、その2号店としてこの店を任されることとなりました。
「何かの料理を突きつめた料理人でない分、いろんな料理を学びたいと素直に思えたことで今があると思っています。焼き鳥、うどん、もつ鍋、おでんとその経験をこの店に全て詰め込むことが出来ました。僕がイタリアワインが好きなので仕事の合間にワインスクールに通いワインをしっかり学んだことも今につながっています」
すっきりした甘味が特徴の醤油のほかみりん、味噌など調味料は富山県のものを使用。板がないのが特徴の名産品「富山の蒲鉾」はじめ干物などを仕入れ、富山県の食の美味しさを伝えています。
「富山県の食材を扱っているところは少ないので、とても喜ばれています。お客さんのこうだったらいな、ああだったらいいなに出来る範囲で応えられるのがイイ店だと思っているんです。僕は煙草を吸わないのですが(笑)、今は喫煙できる店にしています。それは愛煙家のお客さんが多いから。今後も来てくれる皆さんにとって居心地いい店に変化させていきたいと思っています」
日本の居酒屋メニューはすべてワインと相性がよく、マリアージュできるとのこと。ビール、日本酒、焼酎も用意はありますが、ワインを気軽に試してほしいと缶ワインを常時8種類用意しています。
「缶ワインの扱いは居酒屋ではまだめずらしいですが、飲みきりで新鮮だし高品質で美味しいですよ。面白がってくださるお客さんも多く、5缶ぐらい飲まれる方もいらっしゃいますね」
丁寧な出汁取りはじめ、どんなに疲れていても絶対手を抜かない仕込みをすることが長井さんの信条。少しでも手を抜いたら、味がすぐ変わってしまい自分の料理が成り立たないことをわかっているからだそう。
「等々力はしっかりイイものをご提供すればわかってくださるお客さんが多いと実感しています。店の準備をするとキリがなくて、店と寝るためのベッドの行き来だけのヘトヘトな毎日です。でも、これが嫌だったら料理人は続いていない、僕の生き方ですね(笑)。お食事目的でも、ふらりとワイン一杯立ち寄りでも、是非足を運んでみてください」