絵画や工作、小さな頃からものづくりに没頭することがと多かったというオーナーパティシエの小山さん。もともと食べることが大好き、移住していたロシア帰りのお祖母さまとの外国の菓子づくり、お母さまとの日常のパンやコロッケづくりが楽しく、美味しいものを手作りして人を喜ばせる嬉しさを覚えたと振り返ります。高校卒業後辻製菓専門学校東京校へ進学。同フランス校に渡り、リヨンのパティスリーで修行を積みました。

「きちんと計量してレシピ通り忠実につくることこそがお菓子づくりの正解と思ってきましたが、現地で出会った先生の教えは『レシピの常識を疑うこと』でした。お菓子づくりに欠かせない化学の知識を土台に、何かを変えてみたらもっと美味しくなるものもあるはずだから、というもの。今日の私のお菓子づくりの原点となりました」

帰国後、都内の数店舗のパティスリーで製品開発を経験後、国内外で13年間の修行を経て開業へ。小山さんの控えめながら質実な想いが体現されている同店には、華美さを求めぬ、シンプルでシックな風合いのお菓子たちがセンスよく陳列されています。身体に優しいこと、美味しいこと、おしゃれさと美しさもとことん追求しながらも、自身の「核」は素材の背景にある生産者、生産地の産業、文化や環境に思いをはせ、菓子づくりで表現することにあるそう。現地に足を運び、生産者と交流を重ねるなか、その思いは年々強くなっているそうです。


「地方しか流通しない名もなき柑橘類、珍しいハーブや香り高き樹木など変わった素材と出会えると、自分の引き出しを使ってどう加工してどう美味くしていこうか、ワクワクします。いい素材たちには生産者の情熱や苦労といったストーリーがあります。ときに店頭のおしゃべりで、ときにインスタグラムなどを通して言葉でもお伝えさせてもらっています」

看板商品のブルーチーズケーキとレーズンサンドケーキや半生菓子、ほか焼き菓子やアイスクリームなどを提供。旬のフルーツ使いはもちろん、例えば山椒やヒノキやモミなどの意外な素材を香り付けで活用するなど、複雑で奥行きのあるめずらしい味わいでお客さんを感嘆させています。そしてお客さんからの嬉しい反応は必ずそれぞれの生産者さんにも伝えることも欠かしません。

「自分自身が子育て中にいいものを食べられる身近な店がほしかったので、ここをイートインにしました。子連れでレストランまではなかなか、という子育て真最中の方にもぜひ気軽に来てほしいです。これからも私らしい味づくりに挑戦して、驚きと小さな感動をお届けできたらと思っています」



